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うろぱす副船長のYAHOO映画レビューの加筆・修正

右寄り保守系軍事オタクの映画評。感想は辛口ですが映画への愛情の裏返しです

ドイツ映画「スターリングラード」の感想

スターリングラード

酷寒の戦場の絶望感が悲しくも壮絶、そして圧倒的な臨場感と緊迫感の連続
これぞ戦争映画の一つの完成形、ドイツ映画の至宝。ラブロマンス優先の邦題同名ハリウッド映画なんかドイツ版の足元にも及ばない


うろぱす副船長評価 99点
2016/1現在 YAHOO映画レビュー得点 4.07点


後年、ジュード・ロウ主演で製作された邦題同名のハリウッド戦争映画の方が日本では興行的にもヒットし知名度が高いのですが多くの戦争映画ファンの間では戦争映画としての評価は断然、93年に公開されたドイツ版の方が上です。

もちろん日本ではドイツ映画はほとんど公開されない。ドイツ映画の監督や俳優の名前もよほどの映画通でないと知らない。
有名スターが出演するハリウッド作品と比べる事自体が酷とも言える。しかし、ドイツ版「スターリングラード」は戦争の現実を直視した稀の傑作として高く評価したい。

本作と比較すればサム・ペキンパーの「戦争のはらわた」でさえ何となく漫画的に見える。
これはドイツ人とアメリカ人(特にハリウッド文化)との民族性、文化性の違いだろう。

ドイツ人の生真面目な性格は戦争をドラマチックに描く事が出来ないのだ。
戦争は冷酷で残酷、戦場にはロマンも恋愛も存在しない、というのが時代を問わずドイツ人の考え方なのです。
それはドイツ人が製作した数々の戦争映画を見れば理解出来る。旧西独時代の「壮絶”第六軍の最期」、「Uボート」もハリウッド映画に慣れた日本人が見れば重すぎて興行的にはヒットしそうもない。東西ドイツが統一後に製作された「スターリングラード」も同じです。

私に言わせればハリウッド版「スターリングラード」でさえ日本の萌え系映画「真夏のオリオン」や「ローレライ」よりは数段マシだったがアメリカ人は戦場でもラブロマンスを描いた。「パールハーバー」でも同様だった。今でも年がら年中戦争しているアメリカ人より日本と同じく事実上戦争を放棄したドイツ人の方が戦争に対して現実的なようだ。

繰り返しになりますが現実を直視し重すぎるドイツ戦争映画は一般の日本人観客には受けないだろう。
評価するのは私のような右寄り保守系軍事オタクだけだ。ネット上の映画評を見てもハリウッド版の評価は意外なほど高い。一般の観客がどの様な戦争映画を望んでいるのか、よく分かるというものです。

少し前置きが長くなりましたがドイツ版「スターリングラード」は市街戦、雪原の戦闘シーンが秀逸で素晴らしい。
懲罰部隊が軽装備でソ連軍と闘うシーンは戦争映画の教科書的映像と言えるでしょう。

もちろんドイツ映画なのでドイツ軍側の考証は完璧であり軍事マニアの厳しい視線に十分応えられる。特に冬のロシアの凍えるような寒さが画面から伝わってくる。「八甲田山」を見た時と同じ感覚だ。

「スターリングラード」はトマース・クレッチマンの出世作でもある

stqw1.jpg


日本でも最も知名度が高いドイツ人俳優は本作で主人公のヴィッツラント少尉を演じたトーマス・クレッチマンだがこの映画が彼の出世作となった。彼はその後も数多くの映画でドイツ将校を演じておりトム・クルーズ主演の「ワルキューレ」では反乱軍を鎮圧するレーマー少佐を演じた。

本作に数多く登場するキャラクターの中で忘れられないのが眼鏡をかけた冷淡な将校。
コイツが陰険な奴で会社でこんな上司がいたら毎日毎日頭が痛くなるような野郎なんです。まぁ、幸いにしてウチの会社にはあんな奴はいないが・・・

補足
1)ソ連軍の女性兵士を演じたダーナ・ヴァブロヴァは2009年に41歳の若さで亡くなったそうです。

2)この映画の戦闘シーンはポーランドで撮影された。
ソ連軍戦車としてT34/85が登場するが、もちろん実際のスターリングラード戦ではこの戦車はまだ登場していなかった。

3)いつの時代でもドイツ軍将校がはまり役の俳優は必ずいるものだ。
現在はトーマス・クレッチマンだが往年はやはりドイツ人だったヴォルフガング・プライスやカール・オットーアルベルティが忘れられない個性的なドイツ将校を演じた。

4)ところでトーマス・クレッチマンは東ドイツ出身(西独に亡命した)
アンゲラ・メルケル首相は西独ハンブルグの出身だが父親の仕事の関係で幼い頃に東独に移住し東独の大学を卒業した。東西統一後、西独出身者が優越し東独地域は差別されるのかと思っていたが首相やハリウッド映画でも活躍する俳優までもが旧東独側から輩出されている。ドイツ人は実に寛容な民族なのです。

5)ドイツ語では単語の末尾の”d”は濁音を発音しない。
”ドイッチュランド”は誤りで”ドイッチュラント”が正しい読み方。やはりスターリングラート、が正しい読み方ではないでしょうか・・・
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  1. 2016/01/30(土) 19:32:10|
  2. 映画
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コメント

ユンカー出の将校とナチ将校。

 ナチスが果たした「良い功績」の一つに身分の垣根を壊した事にあります。
 ドイツでは日本の士族と同様の階級にユンカーと呼ばれる下級貴族がいて代々官僚や軍人を輩出していました。主人公も姓の前に「Von」をつけているので軍人貴族でしょう。

 ナチスが躍進する以前は、他のヨーロッパ諸国と同じく将校は貴族ばかりでしたが、ナチスの時代から平民出の将校も大勢現れます。
 主人公の上官である少佐は典型的なナチ将校です。国防軍なのでナチ党員ではないかもしれませんが、ナチスの政策や方針に迎合するタイプでしょう。

 ところで、前にも申しましたが、左翼も実はミリオタは大勢存在(ほぼ全員男性)して、よく左翼女性やフェミニストと摩擦を起こしています。
 左翼女性やフェミニストは完全に軍隊を否定するので、ヤマトやガンダムなどのアニメは悍ましい存在として忌み嫌います。

 この「スターリングラード」も反戦を強調しているかのようにもとれるので、左派市民の間でも評判は良い。
 なにより、ベルリンの壁崩壊と東西ドイツ統一は平和の象徴として受け取られ、本作は東ドイツ出身のトーマス・クレッチマンを主役に起用するなど記念碑的要素があります。
  1. URL |
  2. 2016/01/31(日) 13:45:38 |
  3. 晴雨堂ミカエル #-
  4. [ 編集 ]

右からも左からも

右側の思想からも左側の思想からも評価される歴史映画は少数派と言えます。

東映映画「大日本帝国」に関して舛田利雄監監督は”あの作品は保守派からは左翼映画と言われ左翼からは右翼映画と酷評される”と自ら評していました。

福島瑞穂は「男たちの大和」を”右翼的”と評したが軍事マニアの多くは”お涙頂戴映画”とあまり評価が芳しくない。

左右どちらからも評価されるドイツ版「スターリングラード」は正に稀の傑作と言えそうです。
  1. URL |
  2. 2016/01/31(日) 16:59:17 |
  3. うろぱす副船長 #-
  4. [ 編集 ]

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以前からYAHOO映画レビューを書かせて頂いておりますがYAHOO映画では過去記事の訂正や加筆・修正が出来ないのでこちらであらたに書き直したいと思っています。

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